
「選挙のビラをポスティングすることに関して、法的にはどんな規定があるんだろう?」
「選挙のポスティングを、法律を守りながらなるべく効果的に利用したいけれど、どんな方法がいいだろう?」
そんな疑問を持っている候補者や選挙スタッフは多いことでしょう。
結論から言うと、
✖️選挙期間中のポスティングは公職選挙法違反
◎それ以外の時期に「政治活動」としてビラをポスティングするのは違反ではない
のです。
ただし、ビラの内容によっては「政治活動」なのか「選挙の事前運動=選挙運動」なのか、判断が難しいところがあるのが実情です。
そこで今回は、選挙コンサルタントとして16年にわたる豊富な経験をもつ「地方選挙研究会」の吉村慎治さんに、選挙とポスティングについてお話を伺いました。
この記事では、
- 政治活動と選挙運動のビラについての規定と違い
- 政治活動ビラを公職選挙法に違反することなく効果的にポスティングするポイント
- 政治活動ビラをポスティングする際の注意点
についてくわしく説明していただきます。
また、
◎公職選挙法に違反しない効果的な政治活動ビラの作り方のポイント
も教えていただきました。
これを読めば、公職選挙法に違反することなく、効果的なビラのポスティング方法を知ることができるはずです。
あなた自身、またはあなたの応援する候補者が、ポスティングを上手に利用して政治活動できることを願っています!

「地方選挙研究会」
選挙コンサルタント
吉村 慎治さん
昭和40年生まれ。
都内の大学在学中に参院選挙の現場を経験、そのまま当選した議員の秘書になる。
秘書を退職した後、議員の選挙区である茨城に移り会社員となるが、地元の選挙のたびに重用され、選挙コンサルタントの道へ。
平成15年に自営となり、地方議会議員選挙のコンサルティングに特化した「地方選挙研究会」を立ち上げる。
地方議会議員の選挙を専門に全国からの依頼・相談を受けており、現職議員の政策立案や後援会維持のサポートも行っている。
また、「合同会社 筑波創芸」の代表として、選挙に関わる印刷物や広報物の製作も請け負う。
目次
1. 「選挙運動」のポスティングはNG、ただし「政治活動」ならOK!
まず最初に、選挙用ビラのポスティングについて、法的な決まりごとを教えてください。
では、こちら(図1)を見てください。これは「選挙ビラ」、「法定ビラ」と言われるものです。
サイズはA4以内と厳格に規定されていて、選挙管理委員会から交付される証紙を貼ったものしか使えません。枚数は市長の場合は1万6,000枚まで、市議会議員の場合は4,000枚までと選挙種別ごとに決められています。
これは選挙の告示がされて、立候補の届け出をして候補者になってから撒くことができるもので、公に認められている「選挙運動」のビラはこれしかありません。
撒く方法も決められていて、街頭演説や個人演説の会場で渡すか、事務所に来た人に渡す、それと新聞折込だけです。
それ以外の方法はすべて禁止されているので、ポスティングはできません。つまり、「選挙ビラのポスティング」というのはありえない。
選挙期間前に選挙用のビラをポスティングするのは、「事前活動」として公職選挙法違反になってしまいます。まず、それをしっかり認識しておいてください。
はい、覚えておきます。
ただ実際には、選挙期間以外にもこういったビラがポスティングされているのを見たことがあるような気がします……。
それは、選挙が始まる前の「政治活動」として撒くことができる「政治活動のビラ」ですね。こちらは「選挙ビラ」と違って枚数や規格、内容などに制限がない。
もちろんポスティングすることもできます。
ただ、「◯議会議員候補」と書くことはできません。というのも、まだ選挙に立候補していないので「候補」ではないからです。
「候補」と書いてしまうと違法になってしまうので注意が必要です。
では、選挙に関係するビラには2種類あって、それぞれ規定が違うんですね。
その通りです。
- 選挙期間中に「選挙運動」で配るもの=選挙ビラ(法定ビラ、選挙運動ビラ、証紙ビラとも呼ばれる)
- 選挙期間以外(選挙が始まる前)に「政治活動」で配るもの=通称・政治活動ビラ
の2種類で、ポスティングできるのは政治活動ビラだけだというわけですね。
くわしい規定と違いは、以下の表を見てください。
<選挙運動ビラと政治活動ビラの違い>
選挙運動ビラ |
政治活動ビラ |
|
頒布できる期間 |
選挙告示・公示後の選挙期間のみ |
選挙期間と投票日以外ならいつでも可 |
頒布できる方法 |
・新聞折込 |
どんな方法でも可 |
頒布できる枚数 |
・都道府県議会:1万6,000枚 |
制限なし |
サイズと種類 |
・A4版以内 |
いずれも制限なし |
内容 |
・頒布責任者と印刷者の住所、氏名の記載が必要 |
・「◯◯市議会議員候補」「◯◯市長選立候補予定」など選挙に出ることがわかる表現は禁止 公職選挙法違反に |
2. 政治活動ビラの効果:首都圏ほどポスティングの有効度は高まる!
ポスティングができるのは選挙前の政治活動ビラだけというのはわかりました。
でも実際のところ、政治活動でポスティングを利用している人はどのくらいいて、どのくらい効果があるんでしょうか?
選挙を目指す人は、ほとんどがやっているでしょうね。特に、首都圏に近くなればなるほど、ポスティングは非常に有効だと思います。
田舎の方だと、有権者の間に「顔を出さない人はダメだ」という風潮があって、戸別訪問を主力として票を取りにいく必要があるんですよ。それに、そもそもポスティングしたくても、地元には業者がないという地域もありますから。
一方で、街場であれば業者はあちこちにありますよね。また、都会は人口が多いので、例えば東京で区議会議員を目指すなら、何千票も取らなければいけない。
それだけ取れるほどの軒数を、本人が個別にまわりきることはできないので、ポスティングが効果を発揮するわけです。
他の候補者と差別化するためにも、できれば3回以上はポスティングするといいでしょうね。
3回以上ですか!?
でもそれだと、「しつこい」と嫌がられてしまって、逆効果にはなりませんか?
確かにそう感じる人はいますし、実際にポスティングについての苦情はあります。でも、3回撒く中でも、受け取った人の心の持ちようが違ってくることもあるんですよ。
例えば2回目までは、「いつもいつもしつこいな、イヤだな」と思ったとしても、3回目のときに何かのきっかけで、「あ、また来てる、この人がんばってるんだなあ」と感じるかもしれない。
そう思わせられたらこちらの勝ちですよね。
それに、例えば有権者が20万人いるある市では、だいたい2,000票取れれば当選できるんですね。つまり、有権者の1%が自分のファンになってくれれば当選です。
だから、それ以外には敵を作ってもいい。嫌がられることを怖れるよりも、ちゃんと情報を届けることを考えた方がいいんです。
「私はこの町の防災力を高めたいんだ!」「高齢者に住みやすい街を作りたいんだ!」という自分の思いを、自信を持ってビラに込めることこそが大事だと思いますよ。
わかりました、怖れずにできるだけたくさん撒くことが効果的なんですね。
その通りです。
政治活動、選挙活動において、印刷物は非常に重要なアイテムです。他の候補者もみんなビラを撒くわけで、その中から自分を選んでもらうには、差別化して、
◎記事の内容をよりいいものにすること
◎デザインもよりいいものにすること
◎撒く回数・枚数をより多くすること
が必要なんです。他の候補より一枚上手を狙っていきましょう。
3. 「事前運動」は違法!政治活動ビラのNG行為
政治活動ビラについて、やってはいけないNG行為というのもありますか?
政治活動に関しては、憲法の言論の自由、表現の自由、思想の自由が認められているので、原則として活動方法や内容などには一切規定がありません。
ただ、選挙の告示前に「選挙運動」をすることは、「事前運動」として公職選挙法で禁じられているんです。ビラなどの印刷物の場合は、「将来選挙に出ること」や「どの選挙に出るか」がわかる表現は「事前運動」とみなされてしまいます。
そのため前述したように、「県議会議員候補」「市長候補」といった表現は使えないわけです。現職の議員であれば、肩書きとして「県議会議員」と記載することはできますが、新人であれば、「県議会議員候補」と書くことはできません。
ではもし、市長選挙と市議選挙と県議選挙を同時に行う、というような場合には、選挙が始まる前の政治活動では、ビラを配ってもこの人がどの選挙に立候補するのかを知らせることはできないわけですか?
そういう時には、わかりやすい言葉として「市政」「県政」「国政」という表現を使うんです。
「目指す市政」とか「こういう◯◯市を作りたい」など、うまく言葉を濁した表現で、「この人はきっと市議会議員を目指しているんだな」とわからせるのが、法に触れないビラづくりの鉄則です。しかもこの表現なら、市議会議員か市長、どちらの選挙に出るかも限定されないからOKです。
逆に、「私が目指す市長像」などと書いてしまうと、市長選挙に出るとわかってしまうので、公職選挙法違反になります。詳しいOK・NG例は、以下を見てください。
【政治活動ビラのOK・NG表現例】
《OK例とその根拠》
- 「目指す市政」
- この表現だけでは選挙に出るかはわからないし、出たとしても市長選か市議選か特定することはできないため
- 「こういう◯◯市を作りたい」
- 市を作るのは市長・市議双方の仕事なので、どちらの選挙に出るのか特定されないため
- 「◯◯な国政を目指す」
- 国政には参議院と衆議院があり、どちらの議員を目指すのか限定されないため
- 肩書きとしての「◯◯市議会議員」「◯◯県議会議員」「◯◯市長」
- 現職として実際にその職についている場合、現在の肩書きを記載しただけであって、次回の選挙に出るかはわからないため
【政治活動ビラのOK・NG表現例】
《NG例とその根拠》
- 「市議会議員候補」「県議会議員候補」
- まだ立候補していないのに候補を名乗っていて、どの選挙に出るのかも特定できてしまうため
- 「立候補予定者」
- 選挙に出ることがわかってしまうため
- 「目指す市長像」「将来市議会議員になって〜」
- どの選挙に出るのか限定できてしまうため
ではこのOK表現を使っていれば、絶対に違法とされることはないでしょうか?
いえ、絶対とは言い切れないのが実情です。というのも、そもそも政治活動というのは、多くの場合でその先に選挙を見据えて行うもので、その意味では「選挙運動」とのグレーゾーンにあるんです。
ビラの内容についても、選挙管理委員会に持っていっても誰もチェックしてくれない。公職選挙法の違反を取り締まるのは警察の仕事ですから、警察がNGと判断すれば「違法」とされてしまいます。
選挙コンサルタントとして長く仕事をしていても、これは非常に難しいところです。
そうなんですか!?
では「この表現なら大丈夫」と思っても、違法とされてしまうケースもあるんでしょうか?
実は、私も先日はじめてそういう経験をしました。宮城県で県議会議員選挙に立候補する候補者のコンサルティングを担当したんです。
そこで、今までいろいろな選挙で作ったのと同じようなビラを用意して撒いたんですが、警察から「これは事前運動にあたるのではないか」と警告を受けてしまった。
別に怒られたわけでも、処分があったわけでもなく、ただ簡単に話があっただけでしたが、今まで東京、神奈川、茨城などどこでもOKだったビラについて、宮城県だけがダメだったんですよ。
警察によって判断が分かれるのでは、候補者側は判断に困りますね……。
そうですね、今回はたまたま宮城県でしたが、そこだけに限らず、ローカルルールができてしまうこと自体、法律として整備できていないという証明ですよね。A県ではNGでB県ではOKなんてことは、あってはいけない。
もちろん、「これはダメ」と決まっているならダメでいいんです。ただ、何がどうダメだったのかをハッキリさせないと、今後に差し支える。今までは自信を持って候補者に「こうしましょう!」と言えたものが、言えなくなってしまいますから。
それでもし違法とされてしまえば、捕まるのはビラを作った私ではなくて、候補者や後援会長ですからね。
ですから話は少しそれますが、選挙に関する法整備について、私自身が本を書くなりネット上で発信するなりして、これから訴えていかなければいけないと思っているところです。
それはぜひお願いします!
では次に、実際に政治活動のビラを違法にならずに有効にポスティングするポイントを教えてください。
それでは、
1)法に触れない有効なビラの「ポスティング方法」
2)法に触れない有効なビラの「作り方」
にの2点に分けて、次の章から説明します。
4. 違反でなく効果的な政治活動ビラのポスティング 7つのポイント
ではまず、できたビラをどうポスティングすれば、公職選挙法に違反せずより効果的か、撒き方のポイントを挙げていきましょう。
4-1. できるだけ選挙に近い時期にたくさん撒く
政治活動というのは、最終的にはやっぱり投票に結びつけていかなければならないものです。そのためには、できるだけ選挙に近い時期にたくさん撒くのが効果的です。
ただ、政治活動のビラをポスティングできるのは選挙の前日までです。
選挙期間に入ると、公職選挙法によりビラのポスティングは違法ですし、ビラの規格と頒布方法もさまざまに規制されてしまいますので、政治活動ビラは選挙開始の前日までに配り切ってください。
4-2. 1週間ごとに3回以上繰り返し撒く
政治活動において、ビラの枚数や撒く回数には何の制限もありません。何枚、何回撒いても違反ではありません。
では、効果という面ではどうでしょうか?
私の経験上では、例えば市内全域にビラを撒くと、その人は3日間くらいはとても有名人になれます。でも、それ以上時間が経つと忘れられてしまう。
ですから1回だけで終わらせずに、繰り返し撒くことが重要です。
できれば選挙直前に向けて、1週間ごとに3回は撒くように計画を立てて、ポスティング業者さんと打ち合わせするのが理想ですね。
4-3. 3回撒くビラはすべて違う内容にする
複数回撒く場合は、すべて同じビラにするのではなく、毎回内容やデザインを変えるとさらにいいですね。
例えば、3種類のビラを以下のように撒きます。
◎1回目:プロフィールや挨拶文、政策をひと通り掲載した「リーフレット」(A4三つ折り・カラー)
◎2回目:政策の中から1テーマに絞って訴える「政策ビラ」(A4・1色または2色刷り)
◎3回目:政策とプロフィールを中心に掲載したビラ(A4・カラー)
複数回のうち1回は、政策ビラのようなシンプルなものを混ぜると、目に留まりやすくていいと思います。
これらのビラのくわしい内容については、「5-6-5 3種類作る」「6 これならOK!違反でなく効果的なビラ」で説明しますので、そちらも参照してください。
4-4. 地域によって違う内容の政策ビラを撒く
政治活動ビラを撒く場所についても、規定はまったくありません。そこで、同じ選挙区内でも地域によって違うビラを撒くというやり方も効果的です。
例えば3回撒く場合、1回目のリーフレットは自己紹介的な意味があるものなので、全域に同じものを撒いて結構です。
が、2回目などに撒く「政策ビラ」は、地域によって違う内容のものを撒いてほしいところです。
例えば、
◾️「子どもの通学路に幹線道路があって危険」という苦情が多い地域向け
→ 通学路の改善を訴える政策ビラ
◾️高齢化が問題になっている地域向け
→ 高齢者用の公共サービスや、福祉に携わる人材の充実を訴える政策ビラ
◾️過去に地震や水害などの被害にあった地域向け
→ 自治体でできる防災対策を訴える政策ビラ
といったように、自分の政策の中から、各地域が抱える課題に合った内容をピックアップして、それぞれ違ったビラを作り、地域別にポスティングするんです。
そうすれば、受け取った人はパッと見ただけで、「あ、この人はうちの地域の問題をちゃんと考えてくれているんだな」と思ってくれます。
この政策ビラは、フルカラーで印刷しても構わないのですが、「どうしても今このことを伝えたい!」という熱意と緊急性を訴えかけるには、1色刷りのようなシンプルなものの方が適していると思います。
4-5. 小出しにせず短期間に一気に撒く
同じ1万枚のビラを撒くにしても、10日間かけて小出しにポスティングするよりも、2〜3日以内の短期間でドサっと撒いた方がいいでしょう。
「こういう人のビラが入ってたんだけど」「うちにも入っていたわ」「うちにも」「うちにも」……と評判になり、地域内で雰囲気を作ることができますよ。
4-6. 予算の許す限り選挙区内の全域に撒く
もしビラ中心の戦略を考えるなら、ポスティングするビラの枚数は、選挙区内の全有権者に行き届くように用意することをオススメします。
市議会議員を目指すなら、市内全域に撒くといいです。
ただ、予算の問題もありますよね。全域に撒けない場合は、
◾️2回目の政策ビラは、自分の政策に関わりの深い地域だけに撒く
◾️実家の近くなど、自分と縁の深い地域から優先して撒く
といったやり方でもいいと思います。
4-7. できれば選挙の半年〜1年前から準備を始める
政治活動ビラは、選挙期間以外であればいつ撒いても違反ではありません。
もし前述したように、地域性を加味したビラを作って配り分けるには、選挙の半年前、1年前から出馬準備をした方がいいですね。「この地域にはこういった課題があるから、この政策を訴えていこう」という分析と計画が必要だからです。
例えば、私が先日市議選の候補者をコンサルティングした宮城県のある市は、2011年の東日本大震災で津波の被害が大きかった場所でした。
市の東側から、海に面した平地、町の中心部、そして山岳地域とに分けることができるんですが、平地の部分は大半が津波の被害にあったので、ここの住民感情と山側の住民感情はまったく違う。
訴えるべき政策も当然違ってきますから、海側の人たちに向けては防災対策などを打ち出し、中心街向け、山側向けにはそれぞれの抱える課題に合った政策を届けることが有効なわけです。
そのためには、仕込みに時間と手間がかかるので、準備は早めに始めた方がいいですね。早めの時期に、観測気球的に1回ビラを撒いてみて、地域の反応を見るという手もあります。
「挨拶文が読みにくかった」
「◯◯候補のビラと比べると、印象が弱い」
「政策の中に◯◯問題も入れてほしい」
といった声が支持者から上がってきますから、それをもとに改善していくと、選挙直前に本格的に撒く際には最強の武器になってくれるはずですよ。
5. 違反でなく効果的な政治活動ビラの作り方 5つのポイント
次に、選挙に向けて公職選挙法に違反せずに効果を発揮する政治活動ビラの作り方について、準備から実際のデザインまで、すべきことやポイントを挙げていきましょう。
5-1. まず後援会を作る
選挙を目指して政治活動を始めるときには、まず後援会を設立することをオススメします。そして、後援会がビラを発行するという形をとる。
これにより、
◎連絡先や問い合わせ先として個人宅ではなく後援会を記載できる
◎「このビラは後援活動です、選挙運動ではありません」という理由づけができ、「事前運動」を疑われるリスクを回避できる
などのメリットが生まれます。
5-2. イメージカラーを決める
次にイメージカラーを決めます。
そしてその色を、ビラをはじめとしたポスターなどの印刷物全般や、看板、スタッフジャンパーなど、すべてのアイテムに使います。
この色を見たら、「あの人だ」とわかるようにする必要があるんです。
というのも、選挙期間に突入すると、候補者の名前を記載できる場所に制限がかかってしまうんですね。
また、のぼり旗やスタッフジャンパーなどには、政治活動中からも名前は一切記載できません。
それまでに、名前がなくともイメージカラーやスローガンで「あの候補者だ」とわかってもらえるよう、有権者の間に浸透させておくわけです。
そのためには、デザイナーや印刷会社も1か所に絞る方がいいですね。あちこち変えると色やデザインが微妙に違ってしまって、統一感が出なくなります。
5-3. スローガンにはもっとも訴えたい政策を込める
スローガンは、一度決めたら政治活動から選挙運動が終わるまで、ずっと同じものを使います。ですからもっとも訴えたいことを込めた、いわば「自分のサブネーム」みたいなものだと考えて作ってください。
イメージカラー同様、スローガンを見れば、みんなが「ああ、あの候補者だ」とわかるのが理想ですね。
5-4. 「討議資料」という表記を入れる
政治活動ビラにはどんな政治信条を込めてもいいのですが、それが「選挙目的の事前運動」ととられると、すべてがアウトになってしまうのは前述した通りです。
例えば政治活動ビラの場合、名前と写真を大きく掲載して個人をアビールしますよね。そこに事前運動の疑いがかかるわけです。
しかしそこで、「討議資料」と記載することによって、「このビラは、この人について討議をするための資料です」「政治的な記事が書かれているけれど、この政策について討議するための資料なんです」と主張する効果がある。
事前運動と指摘されないための予防策として、「討議資料」という言い訳が必要というわけですね。
5-5. 紙面の半分以上のボリュームで政策を入れる
政治活動では、選挙に向けて名前と顔を売る必要があるので、そこに偏りがちです。
が、討議資料である以上、「顔と名前だけ大きく書いてあるビラでは討議のしようがないだろう」「事前運動だろう」と判断されてしまうと困りますよね。
そこで、ビラの紙面の半分以上は政策に関する文章で埋めるんです。私はたいてい、一面に名前やプロフィールを載せて、反面は全部政策が書かれているように作っています。
挨拶文なども自分の政治信条を込めるものですから、政策の一つとして数えて結構ですよ。ただ、「あまり文章が多いビラだと、読んでもらえないのでは……」という懸念もあると思います。
そこで、文字を少なくしたらどうなるか見てみましょう。
<文字の少ないビラ>
スカスカで、軽く感じませんか?
もっとしっかり文字で埋めれば、たとえ読まなくても「なんとなく重要なことが書いてある」という印象を与えます。
文字をたくさん入れるのは、「討議資料です」という理由づけであると同時に、デザイン上の演出でもあるんです。
5-6. その他・効果的なビラ作りのポイント6つ
また、「違法かどうか」には関わりませんが、ビラの効果をアップするための作り方のポイントも6つほど挙げておきましょう。
顔写真は笑顔・カメラ目線で
ビラに掲載する顔写真は、やはりカメラ目線で笑顔の写真がいいですね。ただ、どうしても笑顔が絵にならない人もいるんです。
その場合は、真顔で斜め上を見上げた写真で、未来に向かっていくイメージを表わすといった工夫もできますが、やはりそれは冒険になってしまうので、できれば笑顔が無難です。
紙を少し厚めにする
紙は、他の人のビラより少し厚め=重めのものがオススメです。その方が持ったときに、「あ、これはちゃんと作られているな」「魂が吹き込まれているな」と思わせることができる。
だいたいは110kg(=原紙1,000枚の重さ)の紙を使うんですが、うちで作る場合は135kgのコート紙(=表面に光沢あるコーティングをしたもの)を使っています。
ゴテゴテしすぎない
スカスカのビラがよくないからといって、逆にゴテゴテしすぎたデザインもNGです。
例えば、本人の顔写真が多すぎたり、名前やスローガンばかりが大きく書かれていたりするものは、「政策に売りがないんだな」ということが直感的に伝わってしまうので、かえって信頼を損ねる結果につながります。
また、顔写真の背景は、白や淡い色の方がいい。中には背景を真っ青とか真っ赤などの強い色にする人もいるんですが、そうすると顔が沈んで見えてしまう。
明るく誠実な印象を与えるには、やはり白を中心にした薄い色がオススメです。
写真でウソをつかない
例えば本人の写真だけでなく、実際には本人と関係ないビジネスマンや外国人などの写真を合成して、グローバル感や有能さなどを演出したビラを見たことがありますが、これは明らかなウソですよね。
文章の内容だけでなく、写真などでもウソはいけません。
3種類作る
ビラは内容やデザインを変えて3種類程度作るのがベストです。といっても、中に書いてある政策は変える必要はありません。政治家の主張がコロコロ変わるのはおかしいですからね。
具体的には、以下の3種類などです。
1)リーフレット:A4三つ折り・カラー
※これはビラの形式の一例です。内容やデザインの見本ではありません。
政治活動を始めるときに、一番最初に作るのが「リーフレット」です。本人のプロフィール、挨拶文、政策などが書かれた、いわばその人のカタログみたいなものですね。
これひとつあれば、有権者がこの人について興味のあることをすべて知ることができます。
サイズは、たいていはA4三つ折りで作ります。これだと男性の内ポケットにも女性のバッグにも入って持ち運びしやすいですし、長3封筒にも入れられて便利です。
2)政策を中心にプロフィールも掲載したビラ:A4・カラー
※これはビラの形式の一例です。内容やデザインの見本ではありません。
※これはビラの形式の一例です。内容やデザインの見本ではありません。
自己紹介的なリーフレットよりも政治信条、より強く政策を訴えるものです。プロフィールもくわしく掲載します。
3)政策ビラ:A4・1色刷り
※これはビラの形式の一例です。内容やデザインの見本ではありません。
政策を前面に押し出して訴えるのが「政策ビラ」です。特に効果的なのは、いくつかある政策の中から1点に絞って取り上げ、2)のビラよりも深掘りするパターンです。
フルカラーでも結構ですが、1色刷りにすると緊急性を演出することもできて印象的です。
4)その他
上記の3種以外にも、候補者の希望で個性的なビラを作る場合があります。例えば、
◎A4サイズより大きいもの
訴えたいことがたくさんある、他の候補者と差別化してインパクトを狙いたいなどの理由で、大きなビラを作る人もいます。が、持ち運びしにくいのが難点ですね。
◎冊子
さらに言いたいことが多くあるからと、冊子型の印刷物を作った人もいました。
例えば、都市計画の専門家で著作が数冊ある方が、新聞に掲載された自分のコラムを集めて冊子を作ったというケースがありましたね。
◎まんが
自分の政策や思いを、文章ではなくまんがにしてしまった人もあります。インパクトもありますし、若い人にも読んでもらいやすいユニークな方法です。
全員に読ませようと思わなくていい
ビラを作るとき、「受け取った人全員に読んでほしい」と考えるかもしれません。が、その必要はまったくない、むしろ10人にひとりが読んでくれればいいのが政治活動ビラ、選挙ビラです。
というのも、選挙は最終的に口コミが重要になってくるもので、各地域にはたいてい口コミの主になる人がいるんです。
例えば、以前は校長先生だったような知的な人で、「あの人の言うことなら間違いない」と一目おかれている存在ですね。
そういう人は、ビラが配られたら全部読み比べていて、まわりの人たちに口コミで読み下してくれます。だから、そういう人に納得してもらえるものを作ることが重要なんです。
一方で、口コミ主以外の人たちには、手に持ったときに「ここには何か重要なことが書いてあるんだ」と思わせることができればいい。そのためには、きちんとデザインする必要もあるというわけです。
6. これならOK!違反でなく効果的なビラ
ここまでのお話をまとめると、政治活動において公職選挙法に違反せずに効果的なビラというのは、以下のようになるわけですね。
その通りです。ただ、「絶対にこの内容・デザインがベスト!」という黄金律のようなものはありません。人によっても、スローガンによっても違ってくるものだと考えてください。
6-1. リーフレット
【形式】
A4三つ折り・カラー
【オモテ面】
《必要な要素》
- スローガン
- 名前(大きく表記)
- 顔写真
- 「討議資料」という表記
- あいさつ文
- プロフィール
- 後援会連絡先
《ポイント》
- 顔写真はカメラ目線で笑顔
- 背景は白か淡い色
- 全体をイメージカラーで統一
【ウラ面】
《必要な要素》
- 政策
6-2. A4ビラ
【形式】
A4・カラー
【オモテ面】
《必要な要素》
- スローガン
- 名前(大きく表記)
- 顔写真
- 「討議資料」という表記
- あいさつ文
- プロフィール(経歴や役職、推薦団体など)
- 後援会連絡先
《ポイント》
- 顔写真はカメラ目線で笑顔
- 背景は白か淡い色
- 全体をイメージカラーで統一
【ウラ面】
《必要な要素》
- 政策
- 写真やイラスト(政策に関連したものや、イメージさせるものなど)
6-3. 政策ビラ
【形式】
A4・一色刷り
【オモテ面】
《必要な要素》
- 政策のうち1テーマをクローズアップしたキャッチコピー
- 政策
- 「討議資料」という表記
- 名前
- 顔写真
- 後援会連絡先
《ポイント》
- 配布する地域ごとに合った政策を詳しく書く
- 住民の声などを入れるのもよい
7.ポスティングする際の注意点
では最後に、ビラをポスティングする際の注意点を教えてください。
それは、
◾️選挙期間中のポスティングは公職選挙法違反
◾️1回で終わらせない
ということです。
7-1. 選挙期間中のポスティングは公職選挙法違反
前述したように、公職選挙法では選挙の告示・公示後のポスティングは禁止されています。ですから選挙ビラはポスティングしてはいけません。
ポスティングできるのは政治活動ビラで、選挙活動が始まる前日までに配り切ってください。
7-2. 1回で終わらせない
政治活動のポスティングには、枚数、回数、場所ともに規制がありません。
ですから、もしポスティングを活動の中心におくのであれば、1回で完結させるという考え方はせず、3回以上行うようにしましょう。ポスティングを1回しかしないと、
✖️3日後くらいには簡単に忘れられてしまう
✖️ビラの内容がよくなかった場合、改善してもっといいビラを出すことができない
というデメリットがあるからです。
わかりました、貴重なお話をありがとうございました!
まとめ
いかがでしたか?
選挙とポスティングについて、法的な規定から効果的に行うポイントまで、くわしく理解してもらえたかと思います。
では最後にもう一度、この記事のポイントをおさらいしてみましょう。
◎「選挙運動」のポスティングはNG、ただし「政治活動」ならOK
◎公職選挙法に違反せず、効果的な政治活動ビラのポスティング 7つのポイントは、
1)できるだけ選挙に近い時期にたくさん撒く
2)1週間ごとに3回以上繰り返し撒く
3)3回撒くビラはすべて違う内容にする
4)地域によって違う内容の政策ビラを撒く
5)小出しにせず短期間に一気に撒く
6)予算の許す限り選挙区内の全域に撒く
7)できれば選挙の半年〜1年前から準備を始める
◎違法でなく効果的な政治活動ビラの作り方 5つのポイントは、
1)まず後援会を作る
2)イメージカラーを決める
3)スローガンにはもっとも訴えたい政策を込める
4)「討議資料」という表記を入れる
5)紙面の半分以上のボリュームで政策を入れる
これらを守れば、公職選挙法に違反することなく、政治活動のビラをより効果的にポスティングすることができます。
あなたの政治活動が、選挙に向けて実り多いものとなることを願っています!