【最新】自治体の広報誌ランキング上位12選!各誌の特徴を徹底解説

会議

「自治体の広報誌を作りたいけれど、いま出ている広報誌で参考になるものはないかな?」

「いま話題の自治体の広報誌は、どんな内容を取り入れているんだろう。ぜひ見てみたい!」

あなたはいま、そうお考えなのではないでしょうか。

いまもっとも高い評価を得ている自治体の広報誌を知るには、「全国広報コンクール」の入賞作品がとても参考になります。公益社団法人日本広報協会が年1度主催しているもので、地方自治体の広報活動の向上を狙いとしています。

1964年に始まった同コンクールは、以下の通り5つの審査部門に分かれ、それぞれの部門で優れた成果物を作った自治体を表彰します。

審査媒体 部門別
広報誌(3部門) ①都道府県・政令指定都市部 ②市部 ③町村部 ①特選 ②入選1、入選2、入選3 ③入選 ④佳作
ウェブサイト(3部門) ①都道府県・政令指定都市部 ②市部 ③町村部
広報写真(2部門) ①一枚写真部 ②組み写真部
映像 部門なし
広報企画 部門なし
内閣総理大臣賞 1団体 特選受賞団体のなかからもっとも優秀な団体に贈られる
総務大臣賞  媒体・部門ごとに各1団体選ばれる。ただし、内閣総理大臣賞を除く
読売新聞社賞  媒体・部門ごとに各1団体選ばれる。地域ニュースや人物を取り上げ、住民の視点を重視した誌面作りが特に優れている作品が受賞対象
日本広報会会長賞  媒体・部門ごとに数団体選ばれる

今回この記事では、上記の審査媒体の中でも「広報誌」に注目し、①都道府県・政令指定都市部 ②市部 ③町村部の分野から、それぞれ上位4つ、計12作品についてご紹介します。

受賞した広報誌に共通する優秀ポイントを探り出すことで、質の高い広報誌とは一体どのようなものなのかを、実例とともに解説していきます。

【2019年広報コンクール 広報誌部門 受賞作品一覧】

分野 特選 入選1 入選2 入選3
都道府県・政令指定都市部 青森県 「 県民だよりあおもり(2018年8月号) 新潟市「市報にいがた(2018年11月4日号)」 広報しずおか「静岡気分」(2018年1月号) 「広報紙KOBE(2018年11月号)」
市部 鹿児島県姶良市 「 広報あいらAIRAview(2018年9月号) 愛媛県西予市? 「広報せいよ(2018年12月号) 新潟県見附市? 「広報見附(2018年11月号)」 静岡県島田市? 「広報しまだ(2018年11月号)
町村部 愛媛県内子町? 「広報うちこ(2018年12月号) 神奈川県葉山町? 「広報はやま(2018年12月号)」 愛知県東浦町? 「広報ひがしうら(2018年9月1日号)」 静岡県吉田町 「 広報よしだ(2018年11月号)」

さらに、上記12選の中でも、広報誌・町村部門の入賞に加え、同コンクール最高賞の「内閣総理大臣賞」を連続受賞した(2018、2019年)、「広報うちこ」についても詳細に取り上げます。受賞作品の強みを実際の誌面を通じて知ることは、今後よりよい広報誌を作るうえで、大いに参考になることでしょう。

1. 【自治体広報誌ランキング】2019年の全国広報コンクール「広報誌部門」受賞作品上位12例

「全国広報コンクール」5つの審査部門(広報誌/ウェブサイト/広報写真/映像/広報企画)のうち、「広報誌」部門では、各自治体で発行する広報誌が審査対象となります。「広報誌部門」は、以下3つの部門に分かれ、受賞作品が決められます。

①都道府県・政令指定都市部
②市部 
③町村部

それぞれ上位から、特選・入選1・入選2・入選3・佳作の順に受賞が決まる仕組みになっています。

また、広報コンクールの出品作品全体にわたり、特に優秀な作品には「総務大臣賞」を、ユニークな視点を据えた作品には「読売新聞社賞」を、最後に、全受賞作のなかでもっとも優秀な成績を収めた作品には、最高賞である「内閣総理大臣賞」が贈られます。

このうち1章では、「広報誌」部門での上位ランキング12作品を取り上げて、ご紹介していきましょう。

1-1. 地元を広く知る!都道府県・政令指定都市部門

「全国広報コンクール」広報誌部門での審査対象の1つ、都道府県・政令指定都市部門の受賞作をご紹介しましょう。

【特選】 青森県「 県民だよりあおもり(2018年8月号)」

県民だよりあおもり

県民だよりあおもり

県民だよりあおもり

出典:青森県 「 県民だよりあおもり(2018年8月号)」

今回、特選を受賞した青森県の広報誌 「 県民だよりあおもり(2018年8月号)」では、特集として「親子で一緒に考えよう。青森で『働くこと』『暮らすこと』」という内容を取り上げています。

親世代・子世代にとって、関心の高い共通の話題を掘り下げるにあたり、保護者からの貴重なアンケートデータを効果的に使用しています。どこの地域でも、よく話題にのぼる内容とはいえ、以下の新しい視点を示したことで、より興味深い内容に仕上げています。

  • 保護者の意識が、子供の就職先に影響を与えているということ          
  • 県内の求人倍率や内定率は高く、地元には多くの就職先があるということ

このような主張をきちんと伝えるため、データを活用し、さらに親しみすいイラストをメインに使用したことで、年代問わず多くの人を読みたい気持ちにさせる、素敵な誌面を作り出すことに成功しました。

【入選1席】 新潟市「市報にいがた(2018年11月4日号)」

市報にいがた

市報にいがた

出典:新潟市「市報にいがた(2018年11月4日号)」

今回、入選1席にランクインした 新潟市「市報にいがた(2018年11月4日号)」では、特集として「誰もが輝けるまちをめざして ともにプロジェクト」という内容を取り上げています。

同市の条例である「新潟市障がいのある人もない人も共に生きるまちづくり条例」の一環として、「ともにプロジェクト」を立ち上げ、すべての住民が活躍できる町づくりを進めている新潟市。今回の号では、障害を抱える人がアートや仕事を通じて、町や人々とつながる話題を紹介しています。

同誌でもっとも魅力的だったのは、インタビューを受けた方の言葉ひとつひとつに、丁寧にアンダーラインを引いていた点です。地の文章との線引きが明確になり、長文を読むのが苦手な読者でも、アンダーラインの部分のみ拾い読みすることで、大方の内容が伝わるように工夫されていました。

さまざまな読み手を意識して、1人でも多くの方にメッセージを届けようとする気持ちが、良く伝わってくる広報誌だといえるでしょう。

【入選2席】静岡市 「 広報しずおか「静岡気分」(2018年1月号)

広報しずおか「静岡気分」

広報しずおか「静岡気分」

広報しずおか「静岡気分」

出典:静岡市 「 広報しずおか「静岡気分」(2018年1月号)」

入選2席にランクインした 静岡市発行の 「 広報しずおか「静岡気分」(2018年1月号)」。メイン特集として、静岡での子育てについて取り上げています。

注目すべき点は、幅広い子育ての内容を、チャプター7つに分類し、可愛らしいイラストや4コマ漫画などを活用してわかりやすく伝えていることです。

優しいパステルカラーをふんだんに駆使することで、育児中のご両親でもほっこりくつろげるような誌面作りが印象的です。

【入選3席】神戸市「広報紙KOBE(2018年11月号)」

広報紙KOBE

広報紙KOBE

広報紙KOBE

出典:神戸市 「広報紙KOBE(2018年11月号)」

入選3席に選ばれた神戸市の「広報紙KOBE(2018年11月号)」は、「読んだら神戸が好きになる」をテーマに据えた広報誌です。受賞号では「神戸お立ち寄りプロジェクトはじまる」というテーマで、神戸市の魅力的な商店街・小売店の商品紹介を特集しました。

ページいっぱいにおいしそうな切り抜き写真をふんだんに並べ、各商品の良さを上手にアピールしています。ページをめくるのが楽しくなる誌面作りになっています。

1-2. 地域への理解が深まる!市部部門

次に、「全国広報コンクール」広報誌部門での2つ目の審査対象である、市部部門の受賞作をご紹介していきましょう。

【特選】鹿児島県姶良市「広報あいらAIRAview(2018年9月号)」

鹿児島県姶良市 『広報あいらAIRAview』

鹿児島県姶良市 『広報あいらAIRAview』

広報あいらAIRAview

 

広報あいらAIRAview

出典:鹿児島県姶良市 「 広報あいらAIRAview(2018年9月号)」 

市部部門で見事特選を果たした、鹿児島県姶良市 「 広報あいらAIRAview(2018年9月号)」。受賞対象号では、「その人を知る 人知からはじまる」として、ともすれば扱いが難しくなりがちな認知症に挑みました。

特徴的だったのは、「5つの人知」として

①ぬくもりを知る 
②存在を知る
③変化を知る
④歩みを知る
⑤老いを知る

という新しい切り口を提示したことです。

各項目を深堀りするために、地元の小学生とお年寄りとの交流や、認知症を抱えるご家族のエピソード、また当事者だけでなく、認知症の理解を深めるために活動する、校区コミュニティ協議会や企業などの視点も紹介し、読み応えのある特集を作り上げました。

【入選1席】愛媛県西予市 「広報せいよ(2018年12月号)」

広報せいよ

広報せいよ

広報せいよ

出典:愛媛県西予市「広報せいよ(2018年12月号)」

市部部門の入選1席に選ばれた、愛媛県西予市 の広報誌「広報せいよ(2018年12月号)」。

受賞号となった特集では、「やけん、ここで」と題し、かつてにぎわいを見せた市をもう一度盛り上げようと、様々な世代が協力しながら奮闘する様子を記事にしました。

多くの人を巻き込んだボリュームもさることながら、もっとも印象的だったのは、特集はじまりのページでは、シャッターが下りた寂しい商店街の写真を掲載したにもかかわらず、特集終わりでは、イベントを通じて多くの人がにぎわう、同じ商店街の写真を掲載したことです。

この対比写真が読者の目を大いに引き付け、写真だけですべてのストーリーと想いが十分に伝わってくる特集記事でした。

読みやすい余白があちこちに点在しているのに、とても多くの情報を与えてもらったような読後感があります。写真とテキストのバランスが優れているゆえんでしょう。

【入選2席】新潟県見附市 「広報見附(2018年11月号)」

広報見附 広報見附 広報見附出典:新潟県見附市「広報見附(2018年11月号)」 

入選2席で入賞したのは、 新潟県見附市が発行する「広報見附(2018年11月号)」です。受賞号では「産地の誇り」と題し、見附市で生産するニット製品について特集を組んでいます。

産地ブランドを広めるために奮闘する社員の取り組みや、ニット製品の生産を学びたいとIターン就職を決めた若者たちの挑戦にスポットをあてており、見附市への誇りが自然に芽生えるような内容にまとめています。地域の特性がよく活かされており、読む人の郷土愛をくすぐる素敵な誌面となりました。

【入選3席】静岡県島田市「広報しまだ(2018年11月号)」

広報しまだ

広報しまだ 広報しまだ 広報しまだ

出典:静岡県島田市「広報しまだ(2018年11月号)」

市部部門の入選3席にランクインしたのは、静岡県島田市が制作を手掛ける「広報しまだ(2018年11月号)」。受賞号の特集内容は、「ダイヤル 公共救急サービスを考える」という題材を取り上げており、高い緊迫度が伝わってくる誌面作りは、他紙と一線を画しています。

誰もが一度は経験したことのある、いざというときに救急車を呼ぶか否かの判断。判断に困った場合、どのように行動すればいいのかを、看護師や医師、救急救命士、民間の介護・救急タクシーの経営者からの視点を交えて紹介しています。

救急車を呼ぶときの、伝えるべき内容の箇条書きや、いざというときに役立つ公共施設の番号、用意しておくと便利なものなどをまとめて案内しています。日常生活に即した、実務性の高い内容を扱っており、自治体の広報誌ならではの特性がよく活かされた広報誌であると言えるでしょう。

1-3. 居住地への愛着がさらに強まる!町村部門

最後にご紹介するのは、「全国広報コンクール」広報誌部門の審査対象の3つ目、町村部門の受賞作です。

【特選】愛媛県内子町 「広報うちこ(2018年12月号)」

広報うちこ 広報うちこ 広報うちこ

出典:愛媛県内子町「広報うちこ(2018年12月号)」

広報誌の町村部門で、見事特選を勝ち取った、愛媛県内子町 「広報うちこ(2018年12月号)」をご紹介しましょう。

こちらの広報誌は、「全国広報コンクール」の応募作品のうち、もっとも優秀な広報誌に贈られる「内閣総理大臣賞」も併せて受賞している、いまもっとも注目されている媒体となります。

受賞号では、「ふるさとの味をつなぐ20年の活動 おばあちゃんのみのり」というテーマで、地元農産物の加工や生産をメインに活動する、5人の「おばあちゃん」について取り上げました。

彼女たちの優しい笑顔と、地元で大きく育った野菜の写真をメインにした誌面からは、作り手の内子町への愛着がひしひしと伝わってくるようです。この町に生まれてよかったと思わせてくれるような、穏やかな時間を共有できる誌面に仕上がっています。

【入選1席】神奈川県葉山町 「広報はやま(2018年12月号)」

広報はやま 広報はやま

出典:神奈川県葉山町「広報はやま(2018年12月号)」

次に、町村部門の入選1席を射止めたのは、神奈川県葉山町 の 「広報はやま(2018年12月号)」です。

今号の特集は、「いつまでもこの町で 笑って過ごそう」というテーマで、認知症との向き合い方を紹介しています。

実際、認知症を発症した人がどのように暮らしているのか、専門医が伝える認知症の正しい知識、地域の取り組みなどあらゆる視点を拾い、発症者本人だけの孤独な戦いにならないよう、周りへの周知をやんわりと促しています。

この広報誌を一目見た読者は、いざ自分が認知症にかかった場合でも、落ち着いた生活ができることをイメージするでしょう。住民の不安を和らげる、有益な特集内容だと言えます。

【入選2席】愛知県東浦町 「広報ひがしうら(2018年9月1日号)」

広報ひがしうら 広報ひがしうら 広報ひがしうら

出典:愛知県東浦町「広報ひがしうら(2018年9月1日号)」

入選2席で入賞したのは、愛知県東浦町の広報誌? 「広報ひがしうら(2018年9月1日号)」です。

特集として、「子育て特集 もっと頼って!もっと使って!子育てサポート」という内容を扱っています。実際の両親の悩みを拾い上げたうえで、子育て支援センターや保健センター、子ども食堂やその他子育てに関するさまざまな活動を、行政や民間問わず幅広く取材しました。

全誌面を通じて使用されているカラフルな色使いも楽しく、疲労困憊の子育てが一転して楽しい時間に感じられます。悩んだときは、どこに相談し、どのように行動を広げていけばいいのかがしっかり伝わり、読み手にとって有益な情報を与えてくれる誌面になっています。

【入選3席】静岡県吉田町 「 広報よしだ(2018年11月号)」

広報よしだ 広報よしだ

出典:静岡県吉田町 「 広報よしだ(2018年11月号)」

最後にご紹介するのは、入選3席に入選した静岡県吉田町の広報誌 「 広報よしだ(2018年11月号)」です。秋の訪れを感じられる季節感たっぷりの表紙をめくると、「ボランティア健幸術」という見慣れない文字が目に飛び込んできます。

この特集では、人々の居場所作りを積極的に行っている、いくつものボランティア団体を紹介をしています。集まってくれたメンバーに対し、ヨガや手芸、映画鑑賞や食育など団体ごとに決まったテーマで活動を深め、参加者たちを笑顔にしています。

この特集で印象強いのは、多くの町民たちが誌面に登場している点です。氏名・年齢とともに顔写真が掲載され、どんな風にぼボランティアを楽しんでいるのかコメントが付いています。

このコメント文は手書き風の文字で表現され、まるで1人1人が実際に話しているかのような不思議な印象を与えてくれます。まさに町民に支えられ、町民に親しまれている広報誌だということがよくわかります。

2. 全国広報コンクール「広報誌部門」で求められる3つの要素

上記の上位12選の受賞作品は、どれも地域の個性があふれた読み応えのある媒体ですが、そもそも「全国広報コンクール」では、応募作品に対して定めている、以下のような審査基準があります。

【企画 】記事の切り口の発想性
【文章】 表現力、読みやすさ、表記等
デザイン・レイアウト

この3つの審査基準は、そのまま良い広報誌を作るコツにもつながります。ひとつずつ解説していきましょう。

2-1. 記事の切り口の発想性

広報誌づくりでもっとも重要な要素の一つとして、記事の切り口が新鮮かどうかが問われます。

同じようなテーマを取り上げたとしても、記事の切り込み方を工夫することで、全く別の展開を引き出すことができ、読者を飽きさせることはありません。そこで必要なキーワードとなるのが、発想性です。

これまで誰も気が付くことのなかった新しい着眼点を生み出すためには、この発想性が欠かせません。読者にこれまでなかった気付きを与えらえるかどうか。その結果、読んでよかったと思わせられるかどうか。ぜひ発想性をフル活用させて、斬新な切り口を探してみましょう。

2-2. 読みやすい表現や文章になっているか

読みやすい表現や文章で書かれているかどうかは、広報誌に限らず、読み物すべてに共通する重要な要素です。

特に広報誌は、若者からお年寄りまで幅広い年代が目にする媒体です。誰が読んでもわかりやすい表現や文章になるよう、心がけましょう。

2-3. 見やすいデザイン・レイアウト

文章や表現と同様、広報誌づくりにおいて見やすいデザイン・レイアウトを意識することは大切なポイントです。

せっかく素晴らしい文章を書いたとしても、レイアウトがごちゃごちゃだったり、写真やイラストが多すぎて目を疲れさせるような誌面では、誰一人文章を読もうという気にはなれません。ページをめくった瞬間、読んでみたい!と思わせる見やすいデザイン・レイアウトになっていますか?

ほどよい余白、写真と文章のバランス、色の統一感、情報の掲載料など、いまいちど読みやすさを念頭に置いて、誌面作りを進めてみることをお勧めします。

3. 上位12選の自治体広報誌に共通する優秀ポイント3つ

今回ランキング上位に入賞した12作品には、前述した3つのコンクール審査基準に加え、共通の秀でたポイントがあります。実際の作品から見えてきた、優秀ポイントをご紹介します。

3-1. 特集内容の視点がプラスアルファになっている

審査基準のひとつとして、「記事の切り口の発想性」が挙げられていましたが、12作品を通して見ると、この点がとても優れていたのではないでしょうか。

特に、切り口の発想性を展開させることで、地域ならではの視点が記事にプラスアルファされ、他地域では出せない個性的な内容に仕上がっています。たとえば今回、広報誌部門で特選を獲得した2つの広報誌を、例に挙げてみましょう。

広報誌名 特集テーマ プラスアルファされた視点
青森県青森市「県民だよりあおもり」2018年8月号 「親子で一緒に考えよう。青森で『働くこと』『暮らすこと』」
  • 保護者の意識が子供の就職先に影響を与えているということ
  • 県内の求人倍率や内定率は高く、地元には多くの就職先があるということ
鹿児島県姶良市「広報あいらAIRAview」2018年9月号 「その人を知る 人知からはじまる」認知症エピソード
  • 認知症の人をとらえる「5つの人知」として、その人の

①ぬくもりを知る
②存在を知る
③変化を知る
④歩みを知る
⑤老いを知る
という新しい切り口を提示した

上記の通り、どこの地域でも直面する問題を特集テーマとして扱いつつも、そこに媒体独自の新しい視点を添えることで、斬新な記事を生み出すことに成功しました。

3-2. イラストの色彩はパステルカラーを多用

今回イラストをメインに使用した広報誌では、その色遣いに意識の高さが感じられました。

あらゆる世代の方が手に取る広報誌では、どの読者層に焦点を当てればいいのか、難しい点も多くあります。特にイラストについては、若い世代が好きなイラスト、高齢の世代が好きなイラストと、はっきり好みが分かれる傾向にあります。

そんななか、今回受賞した広報誌のイラストでは、やさしく穏やかさが感じられる、パステルカラーを使用した媒体が多くありました。

どんな世代がページを開いても楽しめるような工夫が、しっかりなされていたのではないでしょうか。

3-3. 笑顔の写真が多い

今回受賞したほとんどの広報誌に通じることとして、全体的に住民の笑顔で満たされた媒体が多かった印象があります。

ご近所さんがひょっこり誌面に登場したかのような、とても親しみのあるページが数多くありましたが、その距離感の近さを生み出しているのが、ページに掲載された多くの笑顔写真です。

「地域が好き!」「仲間といて楽しい!」という声が、そのまま伝わってくるかのような笑顔に、思わず引き込まれてしまいます。

自分たちの住む地域を大切に思う気持ちが、見事に誌面からにじみ出ている点が、どの媒体にも共通しています。

4. 参考にしたい!二年連続で最高賞の内閣総理大臣賞受賞「広報うちこ」の2つの強み

【2019年内閣総理大臣賞 受賞作品】

広報うちこ

広報うちこ

出典:愛媛県内子町「広報うちこ(2018年12月号)」

【2018年内閣総理大臣賞 受賞作品】

広報うちこ 広報うちこ

出典:愛媛県内子町「広報うちこ(2017年12月号)」

「全国広報コンクール2019」広報誌・町村部門で特選にランクインした、愛媛県内子町の「広報うちこ」は、同時にコンクール最高賞である「内閣総理大臣賞」もダブル受賞しています(応募作品485点のうち)。

こちらの広報誌は、昨年の同コンクールでもやはり内閣総理大臣賞を獲得するという、快挙を成し遂げています。協会によると、2年続けての同賞受賞は、内子町が初めてとのことですが、一体どのような点が高く評価されたのでしょうか。

4-1. とことん地域に寄り添う

「広報うちこ」の強みは、まずとことん地域に寄り添っている点だと言えるでしょう。

2018年の受賞号では、「地域づくりの源泉」という特集を取り上げ、約300人が住む石畳地区の町づくりをテーマに記事を制作しました。

コンクールの講評では、「人と地域が織りなすまちづくりのドラマがうまく表現されていて、その醍醐味が伝わる。他のコーナーにも住民にスポットを当て、地域に寄り添った誌面」というコメントが寄せられました。

続く2019年の受賞号では、「ふるさとの味をつなぐ20年の活動 おばあちゃんのみのり」というテーマで挑みます。地元農産物の加工や生産をメインに活動する、5人の高齢女性たちのもとに、市の広報誌制作の職員が足繁く通い、一緒に活動を見守る中で記事が生まれました。

こちらも「いたるところに登場する市民の笑顔が紙面にあふれている」とコンクールの講評で高く評価されました。

2年とも、地域住民にとことん寄り添い、町の魅力を最大限に引き出すことに成功した内容だからこそ、大きな評価につながったのです。

参照:朝日新聞デジタル2019年5月8日配信「愛媛)広報うちこ、2年連続の最優秀賞 全国広報コン」

4-2. オリジナルの主張がある

同誌の二番目の強みは、記事の中にしっかりとした独自の主張が込められている点でしょう。

2018年受賞の「ふるさとの味をつなぐ20年の活動 おばあちゃんのみのり」について寄せられた講評を見ると、「郷土料理が廃れることは地域の文化が廃れることだという視点でまとめている」と評価されています。

郷土料理やその地域独自の文化について、取り上げる自治体広報誌は数多くありますが、そのなかでも郷土料理と地域文化の関係性を明確に位置づけ、「郷土料理が廃れる=地域文化が廃れる」という媒体独自の主張を述べたところに、新鮮さを感じます。

地元をよく知る作り手ならではの主張は、読者に新しい気付きを与え、地域への愛着をより深めるきっかけになることでしょう。

まとめ

今回の記事では、2019年全国広報コンクールの「広報誌部門」から、受賞作品の上位ランキング12作品をピックアップして解説しました。

コンクールの審査基準として、下記3点が挙げられていましたが、

  • 記事の切り口の発想性
  • 読みやすい表現や文章になっているか
  • 見やすいデザイン・レイアウトか

実際に上位入選した12作品には、この3点に加え、以下のような共通の特徴があることがおわかりいただけたかと思います。

  • 特集内容の視点がプラスアルファになっている
  • イラストの色彩はパステルカラーを多用
  • 笑顔の写真が多い

自治体で発行している数ある広報誌の中でも、こうした優れた事例を知ることで、どのような広報誌が読者にとって魅力的なのかが見えてきます。

この特徴を理解した上で、広報誌づくりを進めれば、きっと地域の方々に喜んでもらえる素敵な媒体になることでしょう。

今回の記事が、あなたの自治体の広報誌づくりの一助になれれば幸いです。

DEALは、全戸配布スペシャリストです。
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