なんとなく「ダイレクトメールを送ろうかな」と思っている方もいるかもしれませんが、ちょっと待ってください。業界・業種によっては、ダイレクトメールの効果が出やすい業界と、出にくい業界があるのが事実です。
つまり、やみくもにダイレクトメールを送っても、効果が出にくい場合があります。また、業界ごとに、反響率をアップさせる方法も違います。
この記事では、ダイレクトメールについての実態調査の結果をもとに、以下のような5つの特徴を持つ業界でダイレクトメールの効果が出やすいことを明らかにしました。
<こんな業界はダイレクトメールでの効果が出やすい!>
効果が出やすい5つの業界 | 例えば… |
---|---|
①高単価商品・高粗利商品を扱う業界 | 不動産、車ディーラー、銀行、保険、ジュエリー、コンサルティング、単品リピート通販など |
②顧客との関係性が重要な業種 | 美容室、エステ・整体などの美容系サービス、アパレル系、飲食系、各種学校など |
③デザイン性や機能性などをDMで直接アピールできる業界 | 広告代理店、デザイン制作会社、衣料品・時計、メガネなど |
④オンライン主体の業種・業界 | Web販売がメインの通信販売メーカー、BtoB用ソフトウェア開発会社、メール中心の業界など |
⑤ニッチな業界や特別なイベントに関わる業界 | ブライダル式場、イベント向けジュエリー、高級ホテル・旅館など |
逆に、ダイレクトメールを送っても効果につながりにくい業界もお教えします。
わざわざ広告費をかけてダイレクトメールを送るなら、費用対効果を理解した上で実施したいですよね。この記事を読むことで、ダイレクトメールの利用が効果的な業界・業種がわかります。最後まで読んで、ダイレクトメールがあなたの業界に合う広告なのかどうかを決める判断材料としてください。
1. ダイレクトメールの業界動向|DMが有効な業界とは
ダイレクトメールについて実際の調査データから、
- どの業界・業種から、より多くのダイレクトメールを受け取っているか
- 受け取った人は、どの業界・業種のダイレクトメールを開封しているか
をご紹介します。
これを見ることで、ダイレクトメールの現在の業界動向がわかります。
1-1. DM発送数が多い業界・業種は?17業界を比較した結果
DMを多く送っている業界・業種は、費用対効果が高いゆえにDM広告を選択して多く送っていると推察できます。
そこで、ユーザーがどの業界・業種から、より多くのダイレクトメールを受け取っているのか、一般社団法人日本ダイレクトメール協会が行った「DMメディア実態調査2018」の示すデータを見てみましょう。この調査結果は、関東エリアの20~50代の男女が受け取った合計2,432通のDMについて分析されたものです。
差出人・企業の業種、つまり「どこから送られてきたDMか」と尋ねた質問の答えは、次のようになっています。
出典:一般社団法人日本ダイレクトメール協会「DMメディア実態調査2018」
受け取ったDMの差出人・企業の業種 | 割合 |
---|---|
通信販売メーカー | 12.8% |
不動産・住宅・設備関連 | 10.3% |
デパート・スーパーなど流通関係 | 6.7% |
衣料品・アクセサリー・時計関係 | 6.3% |
クレジットカード関連 | 6.1% |
保険関連 | 6.0% |
塾・通信教育・カルチャーセンター関連 | 5.9% |
自動車関係(ディーラー、カー用品店など) | 4.9% |
食料品メーカー・食料品店関係 | 4.0% |
郵便局・銀行関連 | 4.0% |
家電量販店 | 3.6% |
薬局・ドラッグストア・化粧品店関係 | 3.4% |
携帯・インターネット通信サービス関連 | 3.2% |
メガネ・コンタクトレンズ | 3.0% |
美容院・エステ・病院医療サービス関連 | 2.1% |
旅行・ホテル・旅行代理店関連 | 1.8% |
レジャー施設関連 | 1.6% |
その他 | 16.8% |
受け取ったダイレクトメールの中で読まれやすいものは、食料品関連、クレジットカード関連、通販、衣料品やアクセサリー関連、家電量販店のものが多いことが分かります。
※ただし、不動産関連など高単価の業種は1件成約すれば利益が大きいため、たとえ開封率が低くとも、ダイレクトメールを実施する価値はあるといえます。
調査ではさらに、ダイレクトメールを受け取って開封・閲読する情報内容として、
- 特売・セール・キャンペーンの案内
- イベントの案内
- クーポンの案内・プレゼント
- カタログや情報誌の送付
- 新商品・サービスの案内
- 試供品の案内・プレゼント
など、具体的メリットのあるものが多いという結果が出ています。
顧客から反応を引き出すためには、具体的メリットを わかりやすく提示することが重要だといえるでしょう。
1-2. DMの効果が出やすい業界・業種は?17業界を比較した結果
先ほどと同じ調査で、受け取った人が「封を開けて目を通しているダイレクトメール」に対する回答は、次のようになっています。
これを見ることで、実際に読まれている業界はどこが多いのか、つまり、効果が出やすい業界がわかります。
「ダイレクトメールを受け取った際、あなたが目を通すことが多い、または読むことが多いのはどのようなものですか。」という設問に、複数回答(あてはまるもの全て)で答えてもらったアンケートの結果は以下です。
出典:一般社団法人日本ダイレクトメール協会「DMメディア実態調査2018」
DMを受け取ったときに目を通すことが多いもの | 割合 |
---|---|
食料品メーカー・食料品店関係 | 30.5% |
クレジットカード関連 | 30.5% |
通信販売メーカー | 28.5% |
衣料品・アクセサリー・時計関係 | 28.5% |
家電量販店 | 28.5% |
郵便局・銀行関連 | 27.5% |
デパート・スーパーなど流通関係 | 27.5% |
保険関連 | 25.5% |
携帯・インターネット通信サービス関連 | 25.0% |
薬局・ドラッグストア・化粧品店関係 | 24.2% |
自動車関係(ディーラー、カー用品店など) | 22.5% |
旅行・ホテル・旅行代理店関連 | 22.0% |
レジャー施設関連 | 20.0% |
メガネ・コンタクトレンズ | 15.5% |
美容院・エステ・病院医療サービス関連 | 14.0% |
不動産・住宅・設備関連 | 12.0% |
塾・通信教育・カルチャーセンター関連 | 7.5% |
その他 | 0.5% |
読まない/上記にあてはまるものはない | 15.5% |
この結果に加えて、開封・閲読する理由については、購入・利用経験がある場合では、特売・セール・キャンペーン案内、イベントの案内、クーポンの案内・プレゼント、カタログや情報誌の送付、新商品・サービスの案内、試供品の案内・プレゼントなど、具体的メリットのあるものが多くなっています。
顧客から反応を引き出すためには、具体的メリットを わかりやすく提示することが重要だといえるでしょう。
DMの反響率をアップさせる方法を知りたい方はこちら
開封率をアップするダイレクトメール封筒(DM封筒)の作り方
QRコードはDMの反響率に効果的!メリットと活用ポイントまとめ
2. ダイレクトメールに適した業界の5つの特徴まとめ
実際の業界動向から、ダイレクトメールを効果的に利用している業界・業種の特徴をまとめると以下のようになります。
- 高単価商品・高粗利商品を扱う業界
- 顧客との関係性が重要な業種
- デザイン性や機能性などをDMで直接アピールできる業界
- オンライン主体の業種・業界
- ニッチな業界や特別なイベントに関わる業界
それぞれ、詳しくご紹介します。
2-1. 高単価商品・高粗利商品を扱う業界(不動産・車など)
例:不動産、車車ディーラー、銀行、保険、ジュエリー、コンサルティング、単品リピート通販など
単価の高い商材(または利益が大きい商材)を扱っている業界では、最もダイレクトメールの効果が出やすいといえます。
なぜなら、ダイレクトメールを作成・発送するコストを上回る顧客獲得が期待しやすいからです
購入してくれそうな層にターゲットを絞ってうまくダイレクトメールを届けることができれば、無駄打ちが減り、より多くの収益に結びつけることができます。
不動産関連や車産業は言うまでもなく、入手・製造コストがかからないうえに高い金額の契約が見込めるコンサルタント業などでも、不特定多数というよりもピンポイントで必要としている人に届けられるダイレクトメールが集客に向いています。
コンサルティングのように商品がかたちとして目に見えないものである場合、ダイレクトメールを効果的に用いることで、信頼性を高めることができます。クライアントとの関係性を維持・構築するために、定期的に手紙を送ったり、セミナーに招待するといった方法で、顧客との接触回数を増やすのが有効です。
ただし、一見すると単価が低い商品でも、LTV(ライフタイムバリュー)を上げるためには、ダイレクトメールが有効となる場合があります。LTVとは、顧客から生涯にわたって得られる利益のことをいいます。
単価の低い業界でも、ダイレクトメールをきっかけにLTVを上げることができるなら、費用をかけてまで行う意味があるでしょう。
また、例えば化粧品などは、単価自体はそれほど高くなくても、顧客に気に入ってもらえれば一生リピートして使ってもらえる可能性があります。こうした場合は、ダイレクトメールが有効といえます。
2-2. 顧客との関係性が重要な業種(美容室・エステなど)
例:美容室、エステ・整体などの美容系サービス、アパレル系、飲食系、各種学校など
美容室、エステサロンなどの美容系、アパレル系、飲食系または学習塾・予備校・習い事・資格講座その他の学校など、顧客との関係性が重要な業種では、コンサルティング業同様、接触回数を増やすダイレクトメールが有効です。
美容院や学校のように競合が多くて顧客の取り合いになりがちな業界では、顧客と良好な関係性を結ぶことが、選んでもらい続けるために重要となってきます。
定期的にコンタクトをとってアピールしなければ、すぐに競合に乗り換えられてしまうでしょう。
誕生日やクリスマスなどのイベントごとのダイレクトメールで顧客との接触回数を増やし、「あなたは大切なお客様です」という意図を伝えることができ、末長くお付き合いできるお得意様になってもらうことが期待できます。
定期的にクーポンやディスカウントの情報を出して、お得意様だけのメリットを提供することも重要です。
2-3. デザイン性や機能性などをDMで直接アピールできる業界
例:広告代理店、デザイン制作会社、衣料品・時計、メガネなど
ダイレクトメールは非常にデザイン性を伝えやすい広告メディアです。画面に表示されるウェブ上の広告と紙に印刷するものではデザインのつくりが異なりますし、紙質や形状、封筒との相乗効果といったウェブにはないプラスαのアピールができるのも面白いところですね。
前述の「受け取ったダイレクトメールを開封して目を通す理由」の調査では、20代では特に、デザインクオリティー、Eメールと異なる郵便物が珍しい、Eメールより読み応えがある、といった項目で平均よりも大きく上回る結果が出ています。
若年層には真新しいものとしてダイレクトメールが認識されているところがあり、デザイン性の高い商材をアピールするツールとしてダイレクトメールが有効なものとなりうることが考えられます。
ただし、デザイン性の高いダイレクトメールをつくろうとするとコストがはねあがりますので、費用対効果について熟考しなければなりません。
広告代理店などでは、顧客が受け取ったダイレクトメールがそのまま商品紹介になることから、ある程度相手を絞ってでも、デザインのレベルが高いものをつくる必要があるでしょう。
DMデザインについて知りたい方はこちら
2-4. オンライン主体の業種・業界(Web通販、情報通信業界など)
例:Web販売がメインの通信販売メーカー、BtoB用ソフトウェア開発会社、メール中心の業界など
意外と効果が出やすいのが、オンライン主体の業種・業界です。
オンラインでの活動が主体の業界・業種では、メールやウェブサイトが中心となり、競合他社があまりDMを出していないことが考えられます。そんな中でDMを出せば、他社を出し抜くことができます。
競合他社がメールやWebなど電子的な方法に偏っている業界では、Webとダイレクトメールの両方を駆使することで大きな効果が出やすくなります。医薬品や健康食品の通販会社で、Web×DMを併用して問い合わせ数が4倍になった例もあります。
参考:通販通信ECMO「WEB×DMで成果4倍、通販業界で紙のDMに再注目」
例えば、通販メーカーでは、せっかくウェブ上の商品を気に入って買ってもらっても、それだけでは店名やブランド名までは、なかなか覚えてもらえません。一度購入してくれた顧客に、ウェブ上で使えるクーポンなどのお得情報をつけて印刷された商品カタログを送れば、非常に効果的なオフラインからオンラインへの導線となります。
新規顧客に対しても、オフラインで認知してもらい、そこからオンラインに誘導できるようにダイレクトメールを上手に使いましょう。
2-5. ニッチな業界や特別なイベントに関わる業界(ブライダルなど)
例:ブライダル式場、イベント向けジュエリー、高級ホテル・旅館など
認知されにくいニッチな業界、または特定のタイミングのみ利用するサービスでは、不特定多数の人にアピールするような広告を作ると無駄打ちが多くなってしまいます。
必要とされる機会を逃さないために、ニーズの見込める顧客にダイレクトにアプローチするダイレクトメールが有効です。
例えば、OA機器のコスト削減を顧客に提案している会社は、コスト削減の意識が低い会社が顧客になり得ますが、意識が低いだけに積極的な情報収集を怠っていることが考えられます。
このような場合、ウェブ上にどんなに素晴らしい広告を展開していても、必要としている人に見つけてもらうことは困難です。コスト削減ができていない会社にダイレクトにアプローチし、まずは認知してもらいましょう。
また、ブライダル関連業界のように、顧客にとっては一生に一度といったイベントに関わる業界では、基本的にはリピーターではなく、一生に一度の新規顧客のみをターゲットとしています。
このような場合、競合他社と差をつけるためにも、必要としている人に対してタイミングを逃さずにダイレクトにコンタクトし、目を引くダイレクトメールで積極的にアプローチする姿勢が欠かせません。
3. 知っておきたい!ダイレクトメールでは効果が出にくい業界2つ
ここまで、ダイレクトメールがおすすめの業界や業種を紹介してきましたが、一方で「ダイレクトメールでは効果が出にくい業界や業種」も確かにあります。
効果が出にくいのに送ってしまうと広告費の無駄遣いになる恐れもあるため、費用対効果をよく見極めてから広告の種類を検討してみるのが良いかもしれません。
<ダイレクトメールでは効果が出にくい業界・業種>
①低単価の商品、粗利が少ない商品などを扱う業界
例:100円ショップ、低単価の文房具店など
②高単価でも「お試し」できない商品を扱う業界
例:ハイブランドの衣類、高級家具など
3-1. 低単価の商品、粗利が少ない商品などを扱う業界
ダイレクトメールを送っても効果が出にくい業界は、単価が低く、一点あたりの利益が少ない業界です。
低単価(または粗利が低い)の商材は、一点売り上げても利益がそれほど大きくありません。そのため、ダイレクトメールを送るコストと見合わないことが多く、ダイレクトメールは有効な手法とならないケースがあります。
利益が低いので、効果的なダイレクトメールを作成して、ニーズのある顧客に届けることに成功したとしても、ダイレクトメールのコストに上回る利益が出せない可能性が高いのです。
例としては、100円ショップで購入できるような商品です。
特別な機能性やデザイン性が備わっていたり、ブランド力を発揮できそうな商品であればよいのですが、1点ずつの利益が低い商品については、ダイレクトメールの十分な効果を期待することは難しいといえます。
もちろんコスト分を回収できないリスクを承知の上でダイレクトメールを利用することもできますが、基本的には不向きな業界だと思っていただいたほうがよいでしょう。
コストを度外視して成功するケースも
費用対効果をストレートにとらえるだけではなく、広い視野でダイレクトメールが自社にとって有益かどうかを検討する目線も必要です。
実際、顧客の離脱防止や>呼び戻し、接触頻度を増やす、横展開を目指すといった目的で、上手にダイレクトメールを使っているケースもあります。
例えば、CCCマーケティングが広告主として制作した業種別の絵本DMは、休眠客22%の呼び戻しに成功し、第32回全日本DM大賞・金賞を受賞しました。
絵本のような装丁で目を引き、表紙と内容を9つの業種ごとに変更するという手間とコストをかけています。絵本の中の切り抜き窓で、強調したい情報を直感的にわかりやすく伝えました。
これは休眠顧客へアプローチしたもので、発送から1か月あまりで41社と商談を再開し(レスポンス率22%)、そのうち6社から受注。想定を大きく上回る反響を得ることに成功したそうです。
この例の場合、優れたダイレクトメールを生み出した結果、広告業界で受賞したことが、さらに宣伝効果を発揮し、CCCマーケティングという会社の評価を大きく高める結果となりました。
3-2. 高単価でも「お試し」できない商品を扱う業界
ダイレクトメールが適している業界として高単価商品を扱う業界を紹介しましたが、お試しできない商品の場合は、残念ながらダイレクトメールの効果が出にくくなります。
例えば、ハイブランドの衣類、高級家具などが当てはまります。突然、試着できない高級コートのチラシが送られてきても、いくら良いものでも「買おう」とはなりませんよね。
ただし、無料で参加できる試着会や展示会のチケットなどをダイレクトメールに付けることで、反響率を大きく上げることができます。高級化粧品のサンプルなども有効です。
まとめ
ダイレクトメールを効果的に活用している業界・業種についてご紹介しました。他の広告手法と同様に、ダイレクトメールにも一長一短があります。
とはいっても、ダイレクトメールは基本的には販促効果の高いツールです。
- 高利益が見込める・高付加価値を提供する業種
- 顧客との関係性を重視する業種
- 紙媒体での提示が見やすさなどの点で顧客にメリットがある
上記のような業界・業種では、ダイレクトメールを有効活用することが期待できます。
具体的な費用やデザインなどの例も参考に、あなたの会社との相性をよく考え、ダイレクトメールを利用するかどうかを検討しましょう。