ずばり、自治体広報は主に4つの課題を抱えています。
- 情報発信の手段に偏りがある。情報発信の体制が整っていない(1-1)
- 住民が欲しい情報と自治体が発信している情報に差がある(1-2)
- 計画的な広報活動ができていない(1-3)
- 広報活動の効果測定ができていない(1-4)
こうした課題と向き合い、一定の成果を上げている自治体もあります。
3章で詳しくご紹介しますが、移住促進を目的に始めた神奈川県葉山町のインスタグラムは2020年5月時点でフォロワー3.2万人の人気アカウントに。インスタグラムを開設した2015年以降、葉山町は社会増が続いています。
自治体の広報活動の課題を理解し解決する糸口さえ掴めれば、より効果的な広報活動ができるようになるのです。自治体に求められる広報は時代とともに変化してきています。
広報の手段も、慣例にとわられるのではなく、SNSを柔軟に取り入れるなど、新たなやり方を模索していく必要があります。
この記事では、
- 自治体の広報活動の課題
- 自治体広報の課題を解決するためのヒント
- 自治体の広報活動の成功事例
について順に解説してまいります。
自治体広報の課題を見出し、改善するための取っ掛かりとして、本記事をお役立てください。
1. 自治体の広報活動が抱える4つの課題
冒頭でも述べたように、自治体の広報活動は次の4つの課題を抱えています。
1-1. 自ら情報発信をする体制が整っていない
自治体の広報活動とは、「まちづくりの総仕上げ」としての役割を担っており
①地域住民に正しい情報を伝えてアクションを起こしてもらう
例:地域のルールや活動を浸透させて、住民に取り組んでもらう
②地域外の人たちに自治体の魅力を発信する
例:観光誘致や移住の促進を狙ったPRをする
という2つの柱で成り立っています。
どちらの柱も「こんな魅力がある」「こんな取り組みがしたい」というビジョンや資料だけを作り、自治体側が待っているだけでは伝えたいターゲットに届くことがありません。
ということは、自治体自ら情報を発信していく基盤を整える必要があります。
しかし、現状は下記の図のように情報発信をしたい事柄はあっても「広報活動のバリエーションが偏っている」「新しい広報活動を取り入れる方法がわからない」というところで止まっており、住民や対外地域に上手くアプローチができていない状態です。
論文「地方自治体からの住民向け情報のメディアミックスの現状と課題」によると、2010年以降ソーシャルメディアの拡大により自治体の広報は時代に合わせてさまざまな方法を取り入れる必要が出てきました。
公益社団法人日本広報協会による「市区町村広報広聴活動調査結果」を見ても、まだまだSNS活用が充分にできていないことが分かります。
SNSの活用調査(2017年) |
|
---|---|
Facebookを活用 |
79.4% |
Twitterを活用 |
48.1% |
LINEを活用 |
13.3% |
インスタグラムを活用 |
24.0% |
スマートフォン向けアプリを配信 |
42.1% |
参考:公益社団法人日本広報協会「市区町村広報広聴活動調査結果」
このように、自ら進んで情報発信をしていかなければならないのにもかかわらず、広報手段が整っていないことが大きな課題となっています。
参考:地方自治体からの住民向け情報のメディアミックスの現状と課題
【SNSでの情報発信が急務となったもう一つの背景】
自治体でのSNS活用が急務だと考えられるようになった背景には、2016年の熊本地震の事例があります。
地震発生時、自治体では防災メールや無線放送だけでなく、SNSやホームページを活用し順次最新情報を更新していました。
この取り組みが住民から好評で、自治体でもSNSが活用できると考えられるように。災害時に正しい情報を収集し拡散するのも自治体広報の重要な活動なので、情報発信ができる基盤作りが急務だと認識された事例でもあります。
1-2. 住民が欲しい情報との間に格差がある
地域住民に向けた広報活動では、住民のニーズを把握し興味を持ってもらえる情報を意識的に発信しなければ、なかなか行動に移してもらえません。
公益財団法人大阪府市町村振興協会の「自治体広報のあり方研究会」報告書では、住民が欲しい情報や興味関心がある情報との間に差があり一方的にお知らせをする広報になってしまっていることを指摘しています。
また、2013年に一般社団法人中央調査社が実施した「自治体の広報に満足しているか」という調査でも下記のようにな結果になりました。
満足していると答えたのは大都市より市町村の方が高く、さらに若い世代よりも高齢者の住民のほうが満足度が高いと言えるでしょう。
言い換えれば、若い世代のニーズを捉えきれていないことになります。
地域によって住民が欲しい情報には差があると思うのでそれを把握したうえで自治体の伝えたいことと紐づけて広報活動ができれば、住民の興味や関心を引き付けることができ自治体との結びつきが強くなるです。
参考:公益財団法人大阪府市町村振興協会「自治体広報のあり方研究会」報告書
1-3. 計画的な広報活動ができていない
広報活動は「情報があるときだけ」「必要を感じたときだけ」という曖昧なものではなく、継続して住民や地域外の人たちとコミュニケーションを測れるものでなければなりません。
しかし、計画的に広報活動ができる状態まで整備できていない「仕組み作り」「目的の明確化」「スケジュール建て」が大きな課題となっています。
仕組み作りができておらず継続した広報活動ができない
地域情報誌の発行やメディア、SNSでのPR、新聞やホームページへの掲載など広報ツールは多岐にわたり、役割分担ができていないと情報発信に偏りが出てしまったり情報更新が遅れてしまったりします。
例えば、SNS担当が不在の場合空いた時間で更新作業をしなければならないため、リアルタイムな発信は難しいでしょう。また、自治体によっては広報課が把握している情報に限りがあるため、他部署との連携も必要となります。
広報活動の仕組み作りを改善するために、東京都杉並区では下記のようなフローを導入しています。
出典:杉並区広報戦略
広報課だけに情報発信を任せきりにせず、PRリーダーに任せられた業務を職員一人一人が広報活動の担い手となり実践していく仕組みです。
一番の負担となる広報活動を多くの職員で行うことで、住民のニーズに合わせた伝わる広報ができるよう工夫をしています。
「どのように広報活動を進めると継続的にできるのか」「必要な情報が拡散できるのか」という点を解決できる仕組みを自治体が作っていかなければなりません。
広報活動の目的が不明確
何のための広報活動なのか明確化できていないと「どれくらいの頻度で実施すべきか」「どのようなツールを利用すべきか」という計画性に結びつきません。
広報活動に力を入れて取り組んでいる長崎県では
- 県外に向けた情報発信と県内への情報発信を分ける
- リアルタイムな情報発信:情報を隠さないことを目的としてホームページなどで実施
- ニュースリリース:県外に情報を公開することを目的とし人材募集・イベント情報を発信
と情報の扱い方を明確化し、それぞれに合わせた方法で広報活動を実施しています。このように、目的が明確になっていないと「ただ情報を発信している」という状態になりかねません。
広報スケジュールが定まっていない
計画的な広報スケジュールが定まっていないと「情報発信をするのかしないのか」という根本的な部分が曖昧となり、スムーズに情報発信ができなくなります。
例えば、月間スケジュールを考えてみると下記のようになります。
月間広報スケジュールの例 |
|
広報誌の発行 |
毎月10日発行 |
SNSでの情報発信 |
1週間に3回更新(月1回会議) |
ホームページの更新 |
10,20,30日に更新 |
○○祭りのPR(ポスター・チラシ) |
20日に完成 |
ラジオでのPR |
毎週水曜日 |
ニュースリリースの発信 |
随時 毎日16:00締め切り |
この中で、事前の打ち合わせや準備が必要となるのが赤くなっている項目です。スケジュールを立てると、すべての広報活動をこなすだけでなく準備などにも時間を要することが分かるでしょう。
そのため、月ごと、年ごとに広報活動スケジュールをしっかりプランニングできないと思うように進まず、実行できないケースも出てきてしまいます。
1-4. 効果測定ができていない
広報活動に力を入れている自治体は増えてきましたが、どのような広報活動が成果につながっているのかしっかり把握できていないのが現状です。
自治体の広報活動をより効率よく進めていくためにも、住民からの「見た」「読んだ」という情報で終わるのではなく「どのような行動や気持ちにつながっているのか」まで把握する必要があります。
論文「自治体広報測定をどのように行うべきか」では、広報活動に点数を付けるという意味ではなく現状から未来に向かい戦略を立てる上で役立つと述べられています。
現状を把握し、よりより自治体の未来につなげていくためにも広報活動の効果測定は、今後取り組むべき課題の一つでしょう。
2. 自治体広報の課題を解決するための4つのヒント
自治体が抱えている問題点を払拭するには、どのようなポイントをチェックすべきでしょうか?ここでは、すぐに見直せる4つのヒントをご紹介します。
2-1. 一点集中型の広報の見直し
公益財団法人日本広告協会の「自治体の広報活動調査からみた自治体広報紙の必要性」の調査によると、広報誌を読む世代とウェブ閲覧をする世代には下記のような差が出ました。
参考:公益財団法人日本広告協会「自治体の広報活動調査からみた自治体広報紙の必要性」
つまり、ウェブやSNSに特化、広報紙に特化など1つの媒体に偏ってしまうと情報を受け取りにくい世代が出てきてしまうのです。
だからこそ、ターゲットに合わせて広報紙とSNS、ホームページ、ラジオなど複数の媒体を上手く組み合わせていく必要があります。
一点集中型の広報がよくないもう一つの理由として「住民への広報」「対外への広報」が分けられないという点があります。下記の表のように、住民への広報活動と対外への広報活動は、必要や情報が大きく異なります。
例えば、広報紙のみを広報活動に使用している場合、県外や市外の人までターゲットとしさまざまな情報を盛り込むと内容が薄くなってしまう可能性があるでしょう。
①住民の中で情報収集に利用する媒体の差
②住民と対外との情報や目的の違い
という2つの点から見ても、一点集中型の広報ではなくいくつかの手段を利用し伝えたいターゲットに伝わる広報活動にしていくことが大切です。
2-2. 広報の目的を意識したツール選び
自治体の広報には主に「観光」「行政」「防災」という3つの目的があります。この目的に合わせて、下記のような広報ツールを使い分ける必要があります。
自治体の広報ツールは種類が豊富ですが、それぞれにメリットとデメリットがあります。目的に合わせて、メリットを最大限に活用できるようにしましょう。
一例として、目的に合わせてツールの強みを活かし分類をすると下記のように活用できます。
迅速な対応が求められる防災面では、日頃の備えや災害時のライフラインを周知する目的でチラシを配布、そして万が一のときに迅速に情報共有をすることを目的にSNSが使えるようにしておきます。
行政では、自治体のビジョンや取り組みを伝えるために広報紙を活用。そして、情報をまとめて誰でも閲覧できるようホームページを使います。
そして、観光では対外へのPRを目的としたSNS、ラジオの利用といったように、目的が分かれば明確な使い分けが可能です。
最後に一つ忘れてはいけないのが、周知をすることで満足しないこと。住民や他の地域の人に興味を持ってもらい実際に行動してもらうところまでを想定して、ツール選定をするといいでしょう。
参考:「SNSと地方自治」
2-3. 住民の目線に立ち話題性のある情報を発信する
1章の「自治体の広報活動が抱える課題」でも解説したとおり、従来の自治体広報は住民の欲しい情報との間にさがある一方的なお知らせ型広報となっていました。
一方的な情報発信ではなく広報活動に住民の目線をプラスすることで、自然と住民の興味や関心が引ける広報活動ができるようになります。
公益財団法人日本広告協会が実施した住民が広報に望むニーズとしては、下記のような項目が上がっています。
住民が望んでいる広報情報のニーズ |
||
A市 |
B市 |
|
健康・福祉・医療介護 |
76.4% |
62.4% |
防犯・防災 |
47.8% |
60.3% |
環境・ゴミ・リサイクル |
45.7% |
47.4% |
観光 |
33.4% |
26.6% |
子育て(教育・学校) |
30.3% |
23.1% |
文化・スポーツ・生涯学習 |
25.4% |
28.9% |
市の施策・政策 |
26.5% |
32.3% |
参考:公益財団法人日本広告協会「自治体の広報活動調査からみた自治体広報紙の必要性」
この項目を把握した上で広報誌のテーマやイベントの内容を決定すると、住民の関心を引き付けることができるでしょう。
例えば、
- 次号の広報誌のテーマに健康・福祉・医療介護を取り入れ、地域施設と結びつける
- 子育てや環境に特化したお役立ちアプリを作成する
- 詳しく地域のリサイクル方法やゴミ出し方法が分かるパンフレットを作成し、行動につなげる
- 文化やスポーツに焦点をあてたイベントを開催し、地域活性化をする
など、住民のニーズと起こしてほしい行動を結びつけて考えると、意味のある広報活動につながります。
地域により住民のニーズは大きく異なるため、アンケート調査などをして住民の生の声を取り入れられるようにするといいでしょう。
【市民の目線で寄りよう広報誌づくり】
毎年公益社団法人日本広報協会が開催している「全国広報コンクール」。2019年に総務大臣賞を受賞した鹿児島県姶良市の広報誌「広報あいら AIRA view」9月号では、住民のニーズとして高い福祉や医療に目を向け「認知症の今」を特集しました。
医師や患者、学校や企業などのエピソードを集約し住民に届けたことで、多くのお便りや感謝の声が届いたそうです。住民のニーズを理解しながら情報を発信、提供することで、住民とのコミュニケーションが円滑になった事例です。
参考:姶良市公式サイト
2-4. 地域ブランド化を意識した戦略
「地域ブランド」とは、地域の特徴を感じられる商品やサービスと地域が持つイメージ(景観や自然、歴史など)を結びつけることで他地域との差別化した価値を生み出し、その価値が広く認知され必要とされるようになることをさします。
観光誘致や移住促進などを掲げている自治体では、他の地域との差別化するために「地域ブランド化」を念頭に置いて広報活動に力を入れたいところです。
京都産業大学の論文「地域ブランドを活かした地域活性化」によると、地域ブランド化をすることで高い収益や価値のある地域資源を生み出せるメリットがある一方で、知名度や認知度が低いと有効活用できないという問題点も指摘しています。
その上で、この問題点を払拭するのが広報活動の役割だとし、SNSやチラシ、メディアをうまく活用する必要があると説明しています。
地域ブランド化を意識した広報活用にはさまざまな方法があるため、一例として宮城県の事例をご紹介します。
宮城県は仙台牛や仙台味噌、お米など売り出したい農産品が数多く存在しています。これらをブランド化するため宮城県農林水産部食産業振興課監修のもと「ぷれ宮夢みやぎ」というサイトをオープン。
出典:ぷれ宮夢みやぎ公式サイト
宮城県を代表するブランド食材をまとめて販売しています。サイトを見てもらっている人の購買意欲をそそるため、ブランド食材を使ったレシピやブランド食材のイベント情報なども、まとめて掲載しているところがポイント。
さらに、Facebookとも連携しており魅力的なブランド食材を通じて「おいしそう」「「買いたい」という気持ちが共感できるようになっています。
地域ブランド化を考える場合は、宮城県の例のように売り出したい特産品に焦点をあててサイトやSNSを展開していくというのも一つの手段です。
参考:京都産業大学「地域ブランドを活かした地域活性化」北海道知的財産戦略本部
3. 【成功事例】自治体広報の課題解決に挑む5つの事例
最後に、下記の表にまとめた5つの自治体の取り組み事例をご紹介します。
使用ツール |
ターゲット |
広報活動の目的 |
|
神奈川県葉山町 |
インスタグラム |
若い世代 |
|
茨城県 |
動画配信 |
県外の人 |
|
埼玉県三芳町 |
広報紙 |
若い世代 |
住民に地域の魅力を伝え、新しい発見をしてもらう |
神奈川県川崎市 |
ラジオ |
地域住民 |
|
福岡県福岡市 |
LINE |
地域住民 |
|
3-1. 「神奈川県葉山町」のインスタグラム活用
2015年6月に開設した神奈川葉山町のインスタグラムは、2020年5月時点でフォロワー3.2万人の人気アカウントとなっています。
発案から運用まで携わっている政策課秘書広報係の宮崎氏は「目的は移住促進」とし、若い世代に見てもらえる広報活動をすることで高齢化が課題となっている自治体の課題解決になればと始めたそう。
写真を見てみるとカラフルで目を引くスポットやおいしいそうな食事の写真が多く、若い世代にヒットするよう工夫されています。
宮崎氏は写真と共にハッシュタグにもこだわり、他のユーザーの投稿促進も戦略的に行ったそうです。それと同時に、ハッシュタグを辿り「葉山町のどのような部分を写真に撮っている人が多いのか」も分析し、自治体の魅力再発見にもつなげました。
「最初は予算からスタートした」と語る熱い想いの甲斐もあり、2015年以降葉山町は社会増が続いており継続的な広報活動からしっかりと結果が実っています。
参考:人が集まる自治体SNS、葉山町の公式インスタグラムに学ぶ10カ条
3-2. 行政動画日本一「茨城県」の戦略
2009年の自治体魅力度調査で最下位となった茨城県は、戦略的な広報活動をするため広報戦略室を設けて魅力を発信できるよう体制を変えていきました。
タレント起用のポスター製作やニュースリリースの増加などさまざまな取り組みを行いましたが、その中で大ヒットとなったのが2012年からスタートさせたインターネット動画「いばキラTV」です。
動画に目を向けたきっかけは、茨城県に県域の民放テレビ局がなかったことだそう。地元の魅力が伝わる「見られる」動画を目的に5年半で約1万本を公開、再生回数は4,700万回を上回り行政動画としては日本一となりました。
特産品の紹介や地域イベント、地域のスポーツ大会など幅広いジャンルにスポットをあてて、見やすい動画にまとめられているところが特徴。
公式サイトを開設しておりSNSとも連携しているため、拡散力が高いところも戦略的なポイントでしょう。
2020年の数値目標としては観光や外国人観光客の誘致、県産品の認知度アップを掲げており、動画を利用し対外への広報活動を成功させている事例です。
参考:魅力度ワースト1からの快進撃 動画サイトで「3冠」を達成したPR戦略
3-3. 読まれるための広報紙に「埼玉県入間郡三芳町」
広報紙を見直すことで、住民との絆を深めた事例がこちら。埼玉県入間郡三芳町が毎月発行している「広報みよし」は、以前は平凡な内容だったそうです。
このままではいけないと2011年に広報担当に立候補した佐久間氏は、ターゲット層を若い世代へと変更し「住民に地域の魅力を伝え、新しい発見をしてもらうこと」を目的とした広報紙作りを始めました。
取材から写真撮影、編集までを一人でこなしていたという佐久間氏。地域の住民や企業にグッと近づいた温度感のある記事は住民の心を掴んだようで、号を重ねることに評判があがり「いいね」という声も聞こえるように。
2015年には全国広報コンクールで総理大臣賞を受賞しています(2014年11月号)。今後も地域活性化につながるような広報紙を目指していきたいとのことです。
参考:「変える!」を有言実行。日本一の広報紙に(埼玉県入間郡三芳町『広報みよし』)
3-4. ラジオを有効活用「川崎市」
神奈川県川崎市は、地域のFMラジオ「かわさきFM」を活用し、月曜日から金曜日まで毎日「アクセスかわさき」を放送しています。
市政情報や市民活動などを中心に放送することを目的としており、住民が手軽に聞けるよう10分番組になっているところがポイント。それだけなく、「アクセスかわさき」の内容を週替わりで韓国や朝鮮語、英語など7カ国語で放送する時間も設けています。
また、緊急時には川崎市の危機管理室から緊急割り込み放送ができるよう連携しており、防災対策にも一役買っています。
地域住民のためにラジオを有効活用し、必要な情報を届けている好事例ではないでしょうか。
3-5. LINEを活用して情報発信力を強化「福岡県福岡市」
福岡県福岡市では、2017年4月より、情報発信力の強化に取り組むべく、LINEを活用した“One to One”情報配信サービスを実施しています。
具体的には、「福岡市LINE公式アカウント」を友だち追加すると、
- 防災情報
- ごみの⽇
- ⼦育て情報
- 市政だより
などの生活に密着した配信情報の中から、選択した情報だけをLINEでタイムリーに受信することができるそう。
その他、「福岡市LINE公式アカウント」には、
- 引っ越しの手続きや証明書の取得方法について調べる
- 区役所窓口の混雑状況等を確認する
など、様々な便利機能も続々と追加されているようです。
自治体は膨大な情報を発信していますが、地域住民によって欲しい情報は異なります。LINEを活用することで、その人が“欲しい情報”だけを確実に届けることができるというのが、この事例のポイントです。
2020年5月時点で「福岡市LINE公式アカウント」の友だち数は160万人超え。
利用者アンケートによると「満足」「どちらかといえば満⾜」が約8割と、高い評価を得ています。
※参考:福岡市HP
総務省HP
自治体通信ONLINE
【自治体の広報活動は「戦略」がカギとなる!】
それぞれの目的を持って取り組んでいる5つの広報活動事例からも「いかに戦略的に取り組んでいるか」が伝わってきたはずです。
例えば、
- 葉山町のインスタグラム活用ではターゲットに刺さる写真を厳選してアップ・ハッシュタグの活用
- 茨城県の行政動画では観光客が興味を持ちそうな特産品を厳選して紹介
- 埼玉県三芳町の広報紙は、若い世代に読んでもらえるようデザインを一新
- 神奈川県川崎市のラジオ放送は毎日継続することで印象を残す
- 福岡県福岡市のLINE活用では、地域住民が欲しい情報を確実に届ける仕組みづくり
まとめ
いかがでしたか?
自治体の広報活動が抱えている課題が把握でき、どうすれば改善できるのかまで掴めたと思います。最後に、この記事の内容を簡単にまとめてみると
自治体の広報活動が抱えている課題は次の4つ
1)情報発信の手段に偏りがある。情報発信の体制が整っていない
2)住民が欲しい情報と自治体が発信している情報に差がある
3)計画的な広報活動ができていない
4)広報活動の効果測定ができていない
自治体の広報の課題を解決するためのヒントは次の4つ
1)一点集中型の広報活動を見直して、住民への情報発信方法、対外への情報発信方法と使い分ける
2)広報の目的を意識して適切な情報発信ツールを選ぶ
3)地域住民のニーズを把握し広報活動をすることで興味を持ってもらい、行動してもらう
4)地域のブランド化を念頭に置いた広報活動も考える
実際に目的に合わせた広報活動を実施している事例は次の4つ
1)神奈川県葉山町:移住促進を目的としたインスタグラムの活動
2)茨城県:特産品の認知度アップや観光誘致を目的とした行政動画の配信
3)埼玉県入間郡三芳町:住民とのコミュニケーションを目的とし広報紙を一新
4)神奈川県川崎市:市政活動や市民活動の周知を目的としたラジオの活用
実際に目的に合わせた広報活動を実施している事例は次の5つ
1)神奈川県葉山町:移住促進を目的としたインスタグラムの活動
2)茨城県:特産品の認知度アップや観光誘致を目的とした行政動画の配信
3)埼玉県入間郡三芳町:住民とのコミュニケーションを目的とし広報紙を一新
4)神奈川県川崎市:市政活動や市民活動の周知を目的としたラジオの活用
5)福岡県福岡市:情報発信力の強化を目的としたLINEの活用
治自体の広報活動の見直しができ、より目的や自治体のビジョンに合った広報活動ができるようになることを願っています。